
キュービクル回避の担当、丸山です。(国家資格:第二種電気工事士)
こちらでは、キュービクルについての情報や「キュービクル回避」について私が担当した事例などをまじえ詳細をご紹介していきます。
前回、「キュービクルの構造の1つ、高圧受電部の役割」についてお伝えしました。
今回は、変圧器部について詳しく見ていきたいと思います。
キュービクルは、前回もお伝えしていますが高圧電力(6.6kVなど)を受電し、施設や工場で使用できる電圧(200Vや100Vなど)に変換するための設備です。
その中でも「変圧器部」は、電圧を変換する最も重要な部分の一つです。本記事では、キュービクルの変圧器部の仕組み、構成、種類、メンテナンスの重要性について詳しく解説していきます。
キュービクルの構造
変圧器部の役割
変圧器部は、高圧受電部から供給された高電圧を、建物内の設備が使用できる低電圧へ変換する役割を持っています。もし変圧器が正常に機能しなければ、適切な電圧を供給できず、設備や機器が動作しなくなってしまいます。
変圧器部の主な役割:
- 高圧から低圧への変換: 6.6kVの電圧を200Vや100Vに変換し、電力を安定供給する。
- 電力損失の低減: 効率的に電圧を変換し、無駄なエネルギーロスを抑える。
- 設備の保護: 電圧の変動を最小限に抑え、電気設備の負担を軽減する。
変圧器部の構成
キュービクルの変圧器部は、以下の主要な部品で構成されています。
1.変圧器本体
変圧器は、電磁誘導の原理を利用して電圧を変換する機器です。内部には鉄心と巻線があり、高圧側と低圧側で巻線の比率を変えることで、電圧を適切なレベルに調整します。
鉄心(コア): 磁束を発生させる部分。一般的にシリコン鋼板を使用し、エネルギー損失を最小限に抑える設計になっています。
巻線(コイル): 高圧側と低圧側に配置された銅線やアルミ線で構成され、電圧を変換します。
2.冷却装置
変圧器は、運転中に電力損失(鉄損・銅損)により発熱します。このため、適切な冷却機構が必要です。冷却方式には以下の種類があります。
自然冷却(AN: Air Natural)
自然空冷方式で、小容量の変圧器に使用される。
強制冷却(OFAF: Oil Forced Air Forced)
冷却ファンやポンプを用いて油を循環させ、冷却効率を向上させる。
3.絶縁油(油入変圧器の場合)
油入変圧器では、絶縁油が重要な役割を果たします。絶縁油の主な役割は以下の通りです。
絶縁性能の向上: 高電圧部の絶縁を強化し、短絡を防ぐ。
冷却効果: 変圧器内部の発熱を抑え、長寿命化に貢献。
アーク防止: 電気的な火花やアークの発生を抑える。
4.バッフル板(空気絶縁変圧器の場合)
乾式変圧器(モールド変圧器など)では、放熱を促進するためのバッフル板が設けられています。これにより空気の流れを制御し、変圧器の温度上昇を抑えることができます。
変圧器の種類
変圧器には大きく分けて2種類のタイプがあります。
1.油入変圧器(油冷式変圧器)
特徴
絶縁油を使用し、冷却性能が高い。
メリット
電気的なノイズが少なく、安定した電圧供給が可能。
高い耐久性を持ち、大容量の負荷に対応可能。
デメリット
絶縁油の管理が必要であり、定期的な交換や分析が必要。
油漏れや火災のリスクがあるため、安全管理が求められる。
2.乾式変圧器(モールド変圧器)
特徴
樹脂でコイルをモールド(成形)し、絶縁する方式。
メリット
絶縁油を使用しないため、メンテナンスが容易。
耐火性が高く、環境に優しい。
デメリット
放熱効率が低く、大容量の負荷には向かない。
油入変圧器に比べ、コストが高くなる場合がある。
変圧器のメンテナンスと点検
変圧器の長寿命化と安全運用のために、定期的なメンテナンスが不可欠です。
1. 外観点検
変圧器の表面に異常な発熱や膨張がないかを確認。
油入変圧器の場合、油漏れの有無をチェック。
2. 絶縁性能のチェック
絶縁抵抗試験を実施し、絶縁性能の低下を確認。
油入変圧器では、絶縁油の試験(油中ガス分析、耐圧試験)を実施。
3. 負荷試験
変圧器が正常に動作しているか、電圧測定や電流測定を行い、適切な変換ができているかチェック。
4. 冷却機構の点検
冷却ファンが正常に動作しているか、清掃や点検を行う。
バッフル板(空冷方式)や放熱フィンの状態を確認。
トラブル事例と対応策
1.変圧器の異常発熱
【原因】
過負荷運転、冷却機構の不具合、絶縁不良など。
【対策】
負荷の見直し、冷却ファンの点検、絶縁抵抗測定を実施。
2.絶縁油の劣化
【原因】
長期間の使用、外部からの水分混入など。
【対策】
絶縁油の交換、油中ガス分析の実施。
まとめ
キュービクルの変圧器部は、電力供給の根幹を支える重要な設備です。適切なメンテナンスと定期点検を行うことで、故障や事故を未然に防ぎ、安定した電力供給を確保することができます。
企業や施設の管理者は、変圧器の特性を理解し、適切な維持管理を行うことが求められます。
お読みいただきありがとうございました!
次回もキュービクルは必要か?についてお伝えしたいと思います。


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