欧米ではキュービクルの代わりに何を使ってるの?

日本で高圧受電設備といえば「キュービクル」が定番ですが、海外では少し事情が異なります。
とくに北米や欧州では、日本のキュービクルと同様の機能を持つ「金属閉鎖形スイッチギヤ」や「パッドマウント型変圧器(Pad-Mounted Transformer)」といった設備が主に使われています。

そもそも「キュービクル」は和製英語

日本で一般的に使われている「キュービクル」という呼び名は、英語の「cubicle(仕切り・小部屋)」から派生した和製英語です。
海外では「Pad-Mounted Transformer(パッドマウントトランス)」「Compact Substation」「Transformer Kiosk」などと呼ばれるのが一般的です。

日本のキュービクルとの違いは?

日本のキュービクルは、受変電に必要な設備(高圧受電盤、変圧器、低圧配電盤など)をひとまとめにしたコンパクトなユニットです。屋外に設置でき、施工が簡単、かつ法令上の点検義務や基準も明確です。

一方で欧米は、各設備を独立させたり、景観やスペースに配慮して埋設・密閉構造にしたりする傾向があります。
これは建築文化の違い、技術基準、気候、治安、電力事情などに起因しています。

欧米では地上設置が当たり前?でも形は違う

アメリカやカナダなどでは、街角や駐車場の隅に緑色のボックス型の設備(Pad-Mounted Transformer)をよく見かけます。
これは日本でいうキュービクルと同様の役割を果たす設備で、地上に設置されているものの、扉が無くボルトで密閉されているなど、安全設計に大きな違いがあります。

イギリス・ドイツなどでは地下埋設型の変電設備も進んでおり、都市景観や防犯を重視する地域では屋外に目立つキュービクルを避ける傾向もあります。

法規制・点検頻度も国によって違う

日本では労働安全衛生法などにより、キュービクルの点検は月次・年次・法定点検(6年ごと)が義務化されていますが、
アメリカやヨーロッパ諸国では自主点検に依存する国もあり
、点検スケジュールの自由度が高い場合もあります。

ただし逆に、「メンテナンス契約が必須」「州・国によって保安官庁が異なる」など、制度の複雑さという面では日本より分かりにくいケースもあります。

金属閉鎖形スイッチギヤ(Metal-Enclosed Switchgear)とパッドマウント型変圧器(Pad-Mounted Transformer)

金属閉鎖形スイッチギヤ(Metal-Enclosed Switchgear)

日本の法令やJIS規格に基づく正式な機器分類
・高圧受電設備(キュービクル)に内蔵される、遮断器・開閉器・避雷器・計器などを金属製の筐体で囲んだもの
・主に操作・保護・計測などの機能を担う「配電盤」的な役割
・基本的には屋内設置型が多く、工場・ビル・プラントなどで使用

パッドマウント型変圧器(Pad-Mounted Transformer)

主に北米などで一般的な、屋外用の変圧器ユニット
・地面に直接コンクリートパッドを敷いて設置する「地上設置型」
・中には変圧器と遮断器・開閉器などが一体化されたモデルもあり、コンパクト化が進んでいる
・商業施設や住宅地など、屋外設置前提で景観・安全性を重視

共通点と相違点のまとめ

項目金属閉鎖形スイッチギヤパッドマウント型変圧器
主な使用地域日本・欧州・アジア北米・一部欧州・アジア
機能開閉・保護・計測など変圧+開閉(統合型あり)
設置場所屋内 or 屋外(キュービクル内)屋外(地面設置)
外装金属製筐体(多面構成)一体型金属ボックス
メンテナンス開放して作業密閉型が多く開放不要
対象規格JIS・電気設備技術基準NSI / IEEE / ULなど

※記事内で「パッドマウント型」と記載したのは、北米における高圧受電設備の実際的な外観と設置形態をイメージしたものであり、日本の「金属閉鎖形スイッチギヤ」や「キュービクル」と対応する機能を持つ設備の一例として紹介しています。
つまり、両者は「似た役割を果たすが設計思想と構造が違う」という位置づけになります。

まとめ

  • 欧米では景観・防犯性・敷地の広さを考慮し、埋設型や密閉型が主流。
  • 日本は狭い土地での施工や短工期が求められるため、キュービクル型が最適解に。
  • 技術的優劣ではなく、インフラ事情の違いによる進化の違い
  • 日本でも景観配慮型やスマート型の受電設備が登場。
  • 海外技術と日本の施工性・法制度のバランスを取った進化が進行中。

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