キュービクルをなしにする方法ある?

「電気工事の打ち合わせで“キュービクルが必要”と言われたけど、費用もスペースも厳しい…」
そんな声を多くの現場で耳にします。

確かに、キュービクルの設置には数百万円の初期費用と、定期的な点検コストがかかります。小規模事業者や新規出店者にとっては大きなハードルとなり、「なんとか回避できないか?」と考えるのは自然なことです。

結論から言うと、「絶対に設置しなければならない」わけではありません。
条件さえ満たせば、キュービクルなし=低圧契約での運用も可能です。
本記事では、キュービクルを避けるための具体的な方法と、それに伴うメリット・注意点を解説します。

キュービクルを設置しなくて済む条件とは?

ポイントはたったひとつ。
契約電力を50kW未満に抑えること
これができれば、キュービクルが不要な「低圧契約」で電力会社と契約することが可能になります。
※ちなみに50kWは、電灯と動力の合計契約電力が基準です。

キュービクルを避ける主な方法

① 電子ブレーカーを導入する

「うちはそんなに電気を使っていないのに、計算上は50kWを超えてしまう…」
そんなときに有効なのが、電子ブレーカー(デマンドコントローラー)の導入です。

通常の電力契約では「契約電力=最大需要電力」として、理論上の最大使用量で契約を結ぶため、実際には使っていないのに契約が高くなってしまうことがあります。
電子ブレーカーは、実際の電気の使い方をリアルタイムで把握し、契約電力を下げることで、低圧契約のままでも快適な運用を可能にします。

  • 同時に複数の大型機器が動かないよう自動制御
  • 一定以上の使用量になると機器の一部を遮断し、オーバーを防止

これにより、50kWを超えることなく、キュービクル設置を回避できる可能性が高まります。

② 設備選定を工夫して「電気を使いすぎない」

開業前なら、「電気をなるべく使わない設計」にするという選択肢もあります。

  • 電気オーブンではなくガスオーブンを選択
  • エアコンの台数・能力を見直す
  • 冷蔵機器の同時使用を制限
  • 調理・製造時間をずらして使用電力を分散

たとえばパン屋なら、ガスオーブンを使い、ミキサーの使用を営業時間外に回すことで、電力のピークを抑えることが可能です。

また、LED照明・インバーター機器など、省エネ対応製品を選ぶことでも、必要な契約電力を抑えやすくなります。

③ 電力契約をエリアごとに分ける(分電)

どうしても電気を多く使う場合でも、建物や事業所をエリアごとに“分割契約”するという方法もあります。

たとえば:

  • 1階のベーカリーと2階のカフェで電力契約を別にする
  • 倉庫部分と事務所部分で受電を分ける

これにより、それぞれの電力契約を50kW未満に抑え、2つの低圧契約で分散して運用することが可能です。
ただし、物理的な回線分離やメーター設置が必要となるため、初期設計段階での相談が重要です。

キュービクルなしで得られる4つの安心

初期投資が大幅に抑えられる
 → 設置費用数百万+保守点検費を丸ごとカット

定期点検・管理の手間が不要
 → 電気主任技術者も不要、保守契約不要

設置スペースが不要
 → 屋上や外構の余裕がなくてもOK

ランニングコストの透明性が高い
 → 電気料金はやや高めだが、わかりやすく安定

導入判断は「シミュレーション」がカギ

結局のところ、キュービクルが必要かどうか、あるいは回避可能かどうかは、

  • 設備仕様
  • 使用電力量
  • 運用スタイル
  • 将来の拡張計画

によって大きく左右されます。
そのため、専門の電気工事業者や電力コンサルに依頼して、実際の設備内容に基づいた電力契約のシミュレーションを行うことが、最も確実でコスト効率の良い判断方法です。

まとめ

キュービクルは回避できるが、戦略的に判断すべきでもあります。

「キュービクルなしでいけるかどうか」は、事業計画と電力設計の“すり合わせ”で見えてきます。
安易に「付ける・付けない」で決めるのではなく、“どう使いたいか”から逆算して判断するのが賢い選び方です。