キュービクルのメンテナンスって必要?

キュービクル(高圧受電設備)を設置したら、しばらくは放っておいても大丈夫。——そう考えていませんか?
実際には、キュービクルは法的にも、運用上も、メンテナンスが必須の設備です。
電気が安定して供給されることを当然のように思いがちですが、キュービクルのトラブルは、建物全体の停電や火災、場合によっては重大な事故にもつながるリスクをはらんでいます。

この記事では、「キュービクルのメンテナンスがなぜ必要なのか?」「どんな内容を、どの頻度で行うのか?」「費用はどのくらいかかるのか?」について、解説していきます。

結論:キュービクルは「メンテナンス必須」です

まず、キュービクルのメンテナンスは、法的に義務付けられています。

これは「やっておいた方が安心」ではなく、「やらないと法令違反になる」レベルの話です。
根拠は、以下の法律・基準です。

法的根拠:電気事業法と技術基準

▷ 電気事業法 第42条

高圧受電設備を持つ需要家は、「電気工作物の保安を確保するため、保安規定に基づく点検・維持を行わなければならない」とされています。

▷ 電気設備技術基準

点検は少なくとも1年に1回以上行い、絶縁状態・漏電・損傷・腐食などを確認することが求められています。

なぜメンテナンスが必要なのか?

キュービクルの内部には、高電圧の電気が通る以下のような部品が詰まっています:

  • 変圧器(トランス)
  • 高圧遮断器
  • 電力量計
  • 開閉器・ヒューズ
  • 避雷器
  • 絶縁体・配線端子

これらは長期間放置すると、経年劣化・漏電・腐食・ホコリの蓄積などが進み、重大な事故を引き起こす可能性があります。

特に注意が必要なのが、

  • 雨漏りによる感電
  • 漏電による火災
  • 電圧異常による停電
  • 動作不良による設備の破損

などです。

実際に行うメンテナンス内容

メンテナンス(保安点検)は、基本的に**「年次点検」+「月次点検」**という形で行われます。

年次点検(1年に1回以上/停電を伴う)

  • 機器内部の目視点検・絶縁抵抗測定
  • 遮断器やリレーの動作確認
  • ボルトのゆるみ・腐食チェック
  • 熱画像による異常温度の確認(サーモグラフィー)
  • 電圧・電流・周波数の記録
  • 異音・異臭の確認

※原則、キュービクルの電源を一時的に遮断して行います。
通常は年1回、深夜や定休日などに実施。

月次点検(または目視点検)

  • 外観の変化(汚れ、破損、異常音)
  • 通風口や防虫ネットの状態確認
  • 漏水の兆候確認
  • 計器の針の異常(過電流・過電圧など)

こちらは簡易な点検で済むため、保安業者と年間契約を結ぶケースが多いです。

誰がメンテナンスを行うのか?

高圧受電設備の保守点検は、有資格者(電気主任技術者)にしか行えません。
ほとんどの中小企業では「外部保安協会・電気保安法人」と保安契約を結ぶ
形が一般的です。

※自社で電気主任技術者(第3種以上)を雇用する義務はありますが、実務上は外部委託(外部委託制度)が認められています。

点検費用の目安

保安契約を含むメンテナンス費用は、以下が相場です。

契約電力年間費用の目安月額換算
50〜75kW12万〜18万円程度約1万〜1.5万円
100〜200kW18万〜30万円程度約1.5万〜2.5万円

※内容(年次点検込み/停電作業含む/緊急対応有無)によって変動します。

メンテナンスを怠るとどうなる?

保守を怠ったままキュービクルを使い続けると、以下のようなリスクがあります。

漏電事故による火災や感電
機器故障による長時間の停電
火災保険の適用除外(メンテ未実施とみなされる)
電力会社からの受電停止通告
電気事業法違反による行政指導や罰則

→ 実際にメンテナンス不足による電気火災は発生しています。
「設備不備による事故」は、所有者責任となるため、賠償リスクもゼロではありません。

メンテナンスを軽視しない=事業継続のリスク管理

メンテナンスの目的は、“法律を守るため”だけではありません。事業活動を止めないためのリスク回避です。
飲食業・工場・医療施設など、電気が止まれば営業が成り立たない業種にとって、キュービクルのメンテナンスは“コスト”ではなく、“保険”です。

まとめ

「メンテナンスなしではキュービクルは使えない」

キュービクルは、設置して終わりの設備ではありません。むしろ、設置後こそが重要なフェーズです。

・メンテナンスは法令で義務
・電気主任技術者の管理対象
・年1回以上の点検+定期的な見回りが必要
・保守費用は月1〜2万円前後
・放置すれば重大事故・法令違反のリスク
安全に、そして事業を止めないために、「点検を定期的に行う仕組み」こそがキュービクル運用の要だといえるでしょう。