キュービクルってどこに置くの?
キュービクルの設置を検討していると、次に直面するのが「どこに置くべきか?」という問題です。
大きくて重そうな装置、しかも高圧の電気が流れる機器。どう考えても好きな場所に自由に置けるわけではなさそうです。
では、実際の建物ではどこにキュービクルを設置しているのでしょうか?また、その選定にはどんな基準や制限があるのでしょうか?
この記事では、キュービクルの設置場所に関する基本ルール、実務上の注意点、そしてよくある質問を一つひとつ解説していきます。
基本の考え方:「安全性」「保守性」「建築条件」
キュービクルの設置場所は、以下の3つの観点から総合的に判断されます:
- 安全性(感電・火災・漏電リスクの最小化)
- 保守性(点検・修理がしやすい配置)
- 建築条件(建ぺい率、防火基準、都市計画)
そのため、「とりあえず空いてるスペースに置いておこう」というわけにはいきません。
電気設備としての技術基準と、建築物としての制約を両立させる必要があるのです。
主な設置場所のパターン
① 建物の外周(地上設置)
最も一般的な方法です。建物の外壁近くにコンクリート基礎を設けて、その上にキュービクルを設置します。
- メリット:設置・点検がしやすい/放熱性も良い
- デメリット:道路から見えると景観に影響/盗難・落書きリスク
※電柱からの電力引き込みがしやすく、設置費用も比較的安価で済みます。
② 屋上設置
都市部や敷地の狭い店舗・ビルでは、屋上設置も多く見られます。
- メリット:景観を損ねない/地上スペースを活用できる
- デメリット:重量対策が必要(1〜2t)/搬入にクレーンが必要
※防水工事や防風・耐震設計も求められます。
③ 建物内の専用スペース(屋内キュービクル室)
大規模施設やビルでは、専用の電気室を建物内に設けてキュービクルを収める場合もあります。
- メリット:風雨や外部環境の影響を受けにくい/防犯性が高い
- デメリット:設計時にスペース確保が必須/換気・放熱設計が必要
※近年は、屋外型の採用が主流のため、屋内設置はややレアケースです。
設置場所に関する技術基準とルール
以下のような基準が、国の技術基準(電気設備技術基準)や建築基準法で定められています:
- 感電防止のため、柵や囲いを設けること(特に屋外設置)
- 火災拡大を防ぐため、可燃物との距離を確保すること
- 緊急時の避難導線や通路を塞がない位置にすること
- 重量に耐えうる**基礎工事(鉄筋コンクリートなど)**が必要
- 周辺に**危険物(灯油・ガスなど)**が保管されていないこと
- 落雷・積雪・高温・風害への対策を取ること
これらに違反すると、設置認可が下りなかったり、火災時の保険が適用されないリスクもあるため、必ず設計士・電気工事士と事前協議が必要です。
よくある質問
- 人が近づける場所に置いても大丈夫?
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基本的に、電気主任技術者以外が近づけないようにする措置(柵や鍵)が必要です。
幼稚園や店舗前など人通りの多い場所に置く場合は、周囲を囲ったうえで警告表示を設置する義務があります。 - 敷地が狭いけど、設置できる最小スペースは?
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最小でも1.5m × 2.0m以上の設置スペースと、点検用に人が出入りできるスペース(1m以上)を確保する必要があります。
狭小地での設置は、コンパクトタイプのキュービクル(1面構成)を検討するケースもあります。 - 雨風にさらされて大丈夫?
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屋外型のキュービクルは、防水・防塵規格(IP××)に対応しています。
ただし、塩害・積雪地・強風地域などでは、特別仕様(ステンレス製、屋根付き)を選ぶことが望ましいです。 - 音や熱の影響はある?
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通常の稼働音はほぼ無音ですが、変圧器や冷却ファンが稼働する際に微細な低周波音を発することもあります。
また、放熱によって周囲の温度が若干上昇するため、近くに窓や吸気口を設けないのが原則です。
設置場所の選び方=トラブル回避の第一歩
キュービクルは、一度設置すると10〜20年単位で使い続ける設備です。
そのため、安易に「ここでいいか」と決めてしまうと、後々のトラブルにつながりやすくなります。
たとえば
- 業務用ごみ置き場と干渉
- 植栽の成長で出入り口がふさがる
- 隣地との境界問題が発生
こうしたことを避けるためにも、設計初期段階での設置位置検討が不可欠です。
まとめ
「どこに置くか」は、設計と運用の両視点から決める。
キュービクルの設置場所は、単なる“空きスペース”ではなく、
- 電力の安定供給
- 安全性の確保
- メンテナンス性の担保
を実現するための戦略的な選択です。
以下の3ステップで検討を進めるのがおすすめです。
- 敷地や建物の条件を整理する(建ぺい率、階数、屋上強度など)
- 必要電力とキュービクルの仕様を確認する(容量、サイズ、放熱)
- 設置後の運用も含めて最適化する(メンテナンス経路、防犯、景観)
プロに相談しながら設置場所を戦略的に決定すれば、後悔のない電力設備導入につながります。